お菓子の賞味期限はどうやって決める?検査に2万円払った店主の実録
「賞味期限って、自分で決めていいの?」
「何日と書けば、あとで困らない?」
お菓子を売り始めるとき、こんな悩みを持っている人は多いと思います。
こんにちは!わたしは兵庫県明石市で、妻と2人で棒付きマカロン専門店を営んでいます。
表示している日数の根拠になった検査の報告書は、今も手元に残しています。
結論から書くと、賞味期限は法律で日数が決まっているわけではなく、個人のお店でも、作ったお店が決めます。
うちも開業のとき、味と見た目、同業種のお菓子の相場感で決めました。
2025年に卸の商談をきっかけに、3商品を検査会社に出しました。
かかったのは6検体(検査に出すサンプル6つ)で21,450円です。
マカロンポーとクッキーは、検査で問題がなかった日数の約8割を表示しています。
この記事では、検査の頼み方・料金・結果の見方・何日に決めたかを、報告書の実物で見せます。
改めてお菓子の賞味期限って、みんなどうやって決めてるか気になるよね??
説明できる根拠があれば、自分で決めていいんです。
▼結論|2商品は検査の日数の約8割にした
先に、うちの3商品の検査と表示を表にまとめます。
| 商品 | 検査の条件 | 今の表示 |
|---|---|---|
| マカロンポー | 30℃・18日 | 常温で約2週間 |
| あんフラワークッキー | 25℃・9日 | 常温で約1週間 |
| 棒付きマカロン | 10℃・9日 | 冷蔵4日・冷凍2週間 |
日数は、どれも作った日から数えています。



3つとも、保存したあとの検査は「問題なし」でした。
マカロンポーとあんフラワークッキーは、問題がなかった日数の約8割(約0.78)を表示しています。
菌の検査で確かめたのは、その日数まで置いても問題がないことです。
18日が上限という意味ではなく、途中の日は検査していません。
おいしさは、その日数のあたりで、自分たちで食べて確かめました。
棒付きマカロンだけは、味と食感で冷蔵4日にしています。
▼賞味期限は誰が決める?
賞味期限を決めるのは、そのお菓子を作って表示するお店です。
国のガイドラインでは「表示責任者」と呼ばれています。
「焼き菓子は何日」のような、一律の日数はありません。
根拠にするのは、次の3つの検査のどれか、または組み合わせです。
全部の検査をする必要はありません。
特性が似ている食品の検査結果を参考にして決めてもよいです。
ただし、期限を延ばすときは、科学的・合理的な根拠が必要です。
根拠の資料は取っておき、聞かれたら出せるように努めることも求められています。
出典:消費者庁「食品期限表示の設定のためのガイドライン」(令和7年3月)
表示のシールの書き方は、「お菓子の食品表示・アレルギー表示の書き方」にまとめています。
▼安全係数は「0.8」から変わった
検査で問題がなかった日数に、1より小さい数をかけて、表示する日数を決めます。
この数を「安全係数」といいます。
これまでは国のQ&Aで、品質のばらつきが少ない食品なら「0.8以上が目安」とされてきました。
2025年3月にガイドラインとQ&Aが改定され、この「0.8」の記述はなくなりました。
代わりに、食品の特性によりますが、安全係数は1に近づけることが望ましい、と書かれています。
改定の背景のひとつは、まだ食べられるお菓子が捨てられる「食品ロス」を減らすことです。
ただし同じガイドラインには、菌が増える可能性や品質のばらつきが大きい食品には、安全係数を設定する必要がある、とも書かれています。
手作りの少量生産は、日によって焼き加減や水分がばらつきやすいです。
うちの約0.78は、0.8よりわずかに短く、より安全めで慎重に決めました。
検査会社の見積書にも、「安全係数0.7〜0.8を考えた日にち」で検査を組んでいると書かれていました(2025年3月時点)。
日々食品の決まりごとは変わっていくんだね
そうなりますね!
商品ごとに、根拠を持って決めましょう!
出典:消費者庁「食品期限表示の設定のためのガイドライン」(令和7年3月)
▼開業時は検査なしで決めた
決め方はわかったけど、検査って1商品で7,000円くらいかかるんだよね…
そう思いますよね?
私も2022年の開業のときは、検査に出していません。
正直、開業したてのころは、自分たちで食べて確かめて、よそのお店の日数をのぞいて「これくらいかな」で決めていました。
周りの開業したてのお菓子屋さんを見ても、最初から検査に出しているお店は多くないです。
ただ、よそのお店の日数は、あくまでそのお店のお菓子の話。
うちのお菓子が何日もつかの根拠にはならないんですよね。
だから検査に出さずに始めるなら、せめて自分のお菓子で「何日目まで大丈夫だったか」をメモしておくのがおすすめです(やり方は「検査しないときの決め方」に書いています)。
クリームやカスタードを使う冷蔵のお菓子だけは、最初から検査か保健所に相談してくださいね。
許可の取り方は「菓子製造業許可の取り方」、開業までの流れは「お菓子屋を開くまでの流れ」にまとめています。
▼検査のきっかけは卸の商談
開業したてのころは検査なしで決めていた私が、なぜ検査に出したのか。
2025年3月、地元のスーパーと卸の商談をしました。
翌日、販売の申込書と一緒に、「菌検査」の結果と商品の写真を出してほしいと言われました。
それまで検査に出したことはなく、ここで初めて検査会社に頼みました。
頼んだのは、神奈川県小田原市の株式会社食品微生物センターです。
法人ではなく、屋号で申し込めました。
申し込みから支払いまでの流れを、日付つきで並べます。
| 日付(2025年) | やったこと |
|---|---|
| 3月8日 | 卸の商談 |
| 3月9日 | 菌検査の結果を出すよう頼まれる |
| 3月10日 | 検査会社から見積もりが届く(3案) |
| 3月11日 | メールで質問し、6検体の見積もりに |
| 3月12日 | 3商品をまとめて冷蔵で発送 |
| 3月13日 | 検査会社が受け取り、届いた日の検査 |
| 3月15日〜4月1日 | 報告書が4回届く |
| 4月2日 | 卸先に結果を送る |
| 4月7日・5月8日 | 支払い(月末締め) |
発送してから最後の報告が届くまで、約3週間かかりました。
卸販売の時、急に検査って言われたね
結果がそろってから、先方に送りました。
▼検査会社に聞いた3つのこと
見積もりをもらったあと、メールで3つ質問しました。
どれも、聞いてよかったことです。
①検体の量は、1回50gほどで足りた
最初の案内は、1回100gほどでした。
「乾燥したお菓子なので減らせないか」と聞くと、検査の項目なら50gほどでよいとのことでした。
②3商品まとめて、冷蔵で送ってよかった
常温の商品と冷蔵の商品がありましたが、まとめて冷蔵で送ってよいと言われました。
③常温の商品は、保管の日数を足してもらえた
保管の日数は、作った日から数えます。
常温で売る商品を冷蔵で送ると、届くまでは常温より条件がよくなります。
そのため、保管の日数の数え方を3つから選べました。
うちは、保管がいちばん長くなる「輸送の日数+1日を足す」にしました。
保存の温度は、検査会社に勧められた温度にしました。
申し込みで1つ失敗した
細菌検査と賞味期限検査は、申し込みのフォームが別でした。
最初に細菌検査のほうから出してしまい、賞味期限検査のフォームから出し直しました。
▼検査の日数はどう決まる?

検査で保存する日数は、「表示したい日数」を安全係数で割って決めます。
うちの見積書には、「18日間(14日根拠)」「9日間(7日根拠)」と書かれていました。
7日と表示したいなら、9日保存しても問題ないかを確かめる、という組み方です。
うちのあんフラワークッキーは、作った日から9日目の検査で問題なし、約1週間の表示です。
見積もりは、次の4通りをもらいました。
| 組み方 | 検体の数 | 税込 |
|---|---|---|
| 案① | 8 | 28,600円 |
| 案② | 10 | 30,800円 |
| 案③ | 10 | 27,060円 |
| 決めた案 | 6 | 21,450円 |
案①〜③は、途中の日にちも検査する組み方です。
案②と案③は10検体以上の割引が使え、案③は途中の回だけ調べる項目を減らしていました。
うちは、届いた日(初発)と最後の日の2回だけにして、3商品×2回=6検体に減らしました。

途中を省くと安くなりますが、ダメだったときに「何日目までは大丈夫だったか」は分かりません。
▼費用は6検体で21,450円
料金表の、よく使う部分だけ抜き出します(税抜・1検体あたり)。
| 基本セット | +黄色ブドウ球菌 | |
|---|---|---|
| 1検体 | 2,250円 | 3,250円 |
| 10検体以上 | 1,950円 | 2,800円 |
基本セットは、一般生菌・大腸菌群・大腸菌の3つです。
黄色ブドウ球菌は、検査会社の最初の見積もりから入っていた項目です。
うちは「基本セット+黄色ブドウ球菌」を6検体で、3,250円×6=19,500円、消費税を入れて21,450円でした。
送料は、検査料金が2,500円以上なら検査会社の負担でした。
検体を保管しておく料金は、かかりませんでした。
月末締めの請求だったので、支払いは2回に分かれました。
※2025年3月の料金です(最新は検査会社にご確認ください)。
▼結果の見方
報告書には、4つの項目が並びます。
マカロンポーを、作った日から18日目(30℃で保管)に検査したときは、一般生菌が「1.4×10³」でした。
1gあたり約1,400個という意味です。

1.4×10³って、多いの?少ないの?
わたしも分からなくて、そのまま聞きました。
検査会社の基準では、加熱した食品は、一般生菌が1gあたり1万個(1.0×10⁴)以下です。
大腸菌群と大腸菌は「陰性」、つまり検査の量の中から見つからないことが基準です。
マカロンポーは基準の内側で、「問題なし」と判定されました。

基準は検査会社ごとに違うので、数字だけでなく、判定のコメント(総評)まで読むのが大事です。
▼冷蔵のマカロンは味で決めた
棒付きマカロンの冷蔵4日は、検査の前から、味と食感で決めていた日数です。
見積もりでも、冷蔵4日を確かめる「6日間(4日根拠)」で組みました。
実際の報告書では、保管は「9日間・10℃」になっていて、結果は問題なしでした。
見積もりより日数が延びた理由は、確かめられていません。
それでも、冷蔵の表示は4日のままにしています。
理由は、菌ではなく、味と食感が落ちるからです。
賞味期限は「おいしく食べられる期限」なので、味や食感を確かめる官能検査も根拠になります。
冷凍の2週間は検査の対象ではなく、これも味と食感を確かめて決めています。
4日のほうが、おいしいうちに食べてもらえるよね
おいしい日数で出したいんです。
冷凍で送るときの梱包は、「お菓子を冷凍で送る方法」に書いています。
▼容器を変えたら検査し直し?
2026年8月、マカロンポーの卸先向けの容器を、プラスチックの容器からチャック付きの袋に変えたいと考えました。
まず自分たちで保存して確かめ、賞味期限・味・食感に問題はありませんでした。
そのうえで卸先にも「検査のやり直しは要りますか」と聞くと、やり直しは不要とのことでした。
ただ、包装を変えると、湿気や空気の入り方が変わります。
とくに脱酸素剤や真空の包装は、空気を嫌う菌などに注意が要ると、国のガイドラインのQ&Aにも書かれています。
日持ちを延ばすために包装を変えるときは、前の検査結果をそのまま使わず、検査会社か保健所に相談してください。
焼き菓子の個包装(シーラー・脱酸素剤)は、「乾燥剤と脱酸素剤の違いは?焼き菓子店の袋の選び方と実物」にまとめています。
▼検査しないときの決め方
検査に出さずに決めるときに確かめられるのは、味や見た目などの「品質」です。
菌は、味や見た目では分かりません。
クリームやカスタードを使う冷蔵のお菓子は、自分の舌だけで日数を決めず、検査に出すか、保健所に相談してください。
日持ちする焼き菓子なら、次のことを記録に残します。
たとえば、10日目まで味が保ち、11日目に食感が落ちたなら、うちの決め方では約8割の8日にします。
卸や委託では、検査の結果を求められることがあります。
結果が出るまで約3週間かかるので、取引を広げるつもりなら、早めに検査の予算と日程を見ておくと慌てません。
記録を残すのが大事なんだね
はい。聞かれたときに見せられれば安心です。
作る場所だけを借りて始めた話は、「店舗を持たないお菓子屋は成り立つ?」にまとめています。
▼よくある質問(FAQ)
Q1. 賞味期限と消費期限、どちらを書けばいいですか?
A. どちらか一方を書きます。
傷みやすく、安全に食べられる期限を示す食品は消費期限です。
比較的日持ちして、おいしく食べられる期限を示す食品は賞味期限です。
「5日以内なら消費期限」のように日数で分ける考え方は、今は国も勧めていません。
うちの商品は、冷蔵4日の棒付きマカロンも含めて、すべて賞味期限で表示しています。
棒付きマカロンは菌の検査では問題がなく、4日は味で決めた日数だからです。
Q2. 検査に出さないと、賞味期限は書けませんか?
A. 外部の検査会社に出すことが、法律で決まっているわけではありません。
ただし、期限は科学的・合理的な根拠で決める必要があります。
傷みやすいお菓子は、菌の確認が必要になることもあります。
うちも開業から2年半ほどは、検査に出さずに決めていました。
Q3. 焼き菓子は、何日にすればいいですか?
A. 一律の日数はありません。
配合や水分、包装、保存の温度で変わります。
うちのあんフラワークッキーは約1週間、マカロンポーは約2週間です。
Q4. 検査は、いくらかかりますか?
A. うちは3商品・6検体で21,450円(税込・2025年3月)でした。
途中で検査する回数(検体の数)や、調べる項目を増やすほど高くなります。
Q5. 個人のお店でも、検査会社に頼めますか?
A. 頼めます。
うちは法人ではなく、屋号で申し込みました。
Q6. 検査の結果は、取っておいたほうがいいですか?
A. 取っておきましょう。
国のガイドラインでも、期限を決めた根拠の資料は保管し、求められたら情報を出せるように努める、とされています。
▼まとめ|根拠を残して、自分で決める
最後に、この記事の要点をまとめます。

- 賞味期限を決めるのは作ったお店。一律の日数はない
- 安全係数は「1に近づける」が今の考え方(2025年3月改定)
- 手作りは、ばらつきを見込んで短めにする
- うちは6検体・21,450円で検査し、2商品は約8割を表示した
- 冷蔵のマカロンは、味と食感で4日にした
- 検査しないなら、保存して確かめた記録を残す
根拠があれば、自分で決めていいんだね
記録を残して、迷ったら相談してくださいね。
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