ハンドメイドの値段設定|値段の付け方と原価率を店主の実例で解説
「ハンドメイドの値段、いくらにすればいいの?」
「高くしたら売れない気がして、つい安くしてしまう…」
心を込めて作ったものに値段をつけるのは、自分自身に値段をつけるみたいで、こわいですよね。
わたしは兵庫県明石市で、妻と2人で棒付きマカロン専門店を営んでいます。
2022年に開業してから、材料費が上がるたびに値上げもしてきました。
結論から書くと、ハンドメイドの値段設定は「原価・相場・自分の時給」の3つで決めます。
うちは原価率3割を目安にしていますが、帳簿で材料の仕入れだけを見ると、売上の約2割でした。
低いからもうかっている、ではありません。
残りの8割から、包装・手数料・家賃と、2人の手間を出しているからです。
この記事では、うちの値上げの実例と、数字を入れるだけで値段と時給が出る計算表で、値段の付け方を紹介します。

値段をつけるのって怖いの?
うん。決める基準がないと、「この値段で買ってもらえるかな」って怖くなるよね。
▼結論|ハンドメイドの値段設定は「原価・相場・自分の時給」の3つで決める
値段が怖いのは、決める基準を持っていないからです。
基準さえあれば、値段は度胸試しではなく、計算と判断になります。
値段の決め方には、大きく2つの考え方があります。
うちはこの2つを、お店ですぐ使える「3つの軸」にしています。

| 軸 | 見るもの | ひとことで言うと |
|---|---|---|
| 原価 | 材料費・包装 | 「ぜんぶ、ならして3割」 |
| 相場 | 売れているライバル店 | 「人気店をベースに」 |
| 自分の時給 | 作る時間 | 「時給を乗せる(うちは5,000円)」 |
使う順番も決めています。
まず相場でだいたいのラインを決めます。
次に、原価が3割に収まるかを確かめます。
最後に、自分の時給の分が残るかを確かめます。
こうすると、3つがバラバラの計算ではなく、1本の判断の流れになります。
▼ハンドメイドの原価計算表|材料費・手数料・時給を入れると値段が出る
先に、計算表を置いておきます。
材料費・作る時間・売る場所の手数料を入れると、その場で値段と時給が出ます。
登録もアプリも要りません。
🧮値段と時給の計算表
数字を入れると、その場で計算します(入力した数字は、どこにも送られません)。
※①②は10円単位で切り上げています。消費税・振込手数料・出店料・1件ごとの手数料(BASEの40円など)は入っていません。最初に入っている数字は計算の例です。
最初に入っている数字は例です。
材料と包装で180円の作品は、原価率3割なら180÷0.3=600円です。
この600円を「売りたい値段」に入れて、1個15分で作るとして計算しています。
ただ、手数料10%(minneやCreemaくらい)を引くと、実質の時給は1,440円になります。
時給1,500円に届かせるには、620円が必要だとわかります。
180円に時給1,500円の15分ぶん(375円)を足して0.9で割ると約617円なので、10円単位で切り上げて620円です。
手数料の欄には、売る場所の手数料を入れる
同じ600円で売っても、売る場所によって手元に残る額は変わります。
主な売る場所の手数料を、2026年10月に公式ページで確かめました。
| 売る場所 | 手数料 |
|---|---|
| minne | 10.659%+振込1回220円 |
| Creema | 作品10.67%/食べ物15.4% |
| BASE(無料プラン) | 3.6%+40円+3% |
| STORES(無料プラン) | 5.5%〜 |
| Shopify(ベーシック) | 月4,850円+カード3.55% |
| 店頭のカード(Airペイ) | 3.24% |
BASEの無料プランなら、計算表の手数料の欄には6.6%を入れます。
1件40円は計算表に入っていないので、出た値段に40円ほど足して考えてください。
お菓子をCreemaで売る場合は、作品より高い15.4%になります。
minneとCreemaは、送料にも同じ率の手数料がかかります。
マルシェや委託販売は、手数料の形が違います。
出店料が決まっている会場は、売れるほど1個あたりの負担が軽くなります。
たとえば出店料3,000円の会場なら、もと手180円の作品を600円で現金で売ると1個420円残るので、8個売ってやっと出店料が戻ります。
売上の何%を払う会場や委託販売は、その分を値段に入れておかないと、売れるほど時給が下がります。
600円で売ったら、手元にいくら残る?
上の手数料で、600円の作品を1個売ったときに手元に残る額を計算しました。
| 売る場所 | 手元に残る額 |
|---|---|
| 店頭のカード(Airペイ) | 約581円 |
| Shopify(ベーシック) | 約579円 |
| STORES(無料プラン) | 約567円 |
| minne/Creema(作品) | 約536円 |
| BASE(無料プラン) | 約520円 |
| 売上の15%を払う会場 | 510円 |
| Creema(食べ物) | 約508円 |
| 委託販売(25%) | 450円 |
同じ600円でも、手元に残る額は約450〜581円で、約130円違います。
1個15分の作品なら、130円の差は、時給にすると約520円の差です。
売る場所を決めてから値段を見直すと、時給の計算がずれません。
うちは、ネットはShopify、店頭とマルシェのカード決済はAirペイを使っています。
▼【軸1】原価率は「1個ずつ」ではなく「ぜんぶ、ならして3割」
まず原価です。
うちのお店は、原価率3割を目安にしています。
原価率は、売値のうち「もと手」(材料費・包装など)がどれくらいかの割合です。
原価率3割なら、600円の商品のもと手は180円です。
- ① 1個にかかる「もと手」(材料費+包装・ラベルなど)を全部たす
- ② その金額を0.3で割る
もと手が180円なら、180÷0.3=600円です。
もと手を約3.3倍する、と覚えてもかまいません。
売値の3割が原価なら、残りの7割で、自分の時給・利益・家賃・販売手数料をまかないます。
ここで、ひとつコツがあります。
1個ずつ全部を原価率3割にしなくていい、ということです。
商品には、ざっくり2種類あります。
入口の商品は、高くしすぎないことが大事です。
自信がある人ほど、一番安い商品まで高くしがちですが、それだと入口が狭くなります。
反対に、こだわりの商品は、しっかり高くします。
小さなお店ほど、利益の出るものを少なく売る「厚利少売」が基本です。
薄利多売は、体力のある大きな会社の戦い方です。
入口は薄く、こだわりは厚く、お店全体でならして3割になっていれば大丈夫です。
💡ハンドメイド作家さんへ:材料費の割合は、作るものによって全然違います(アクセサリーは材料が安め、革や陶器は高めなど)。
大事なのは数字そのものより、1個ずつではなく、お店全体でならして見ることです。
全部の商品を、原価率3割ぴったりにしなきゃダメ?
ううん、お店ぜんぶでならして3割でいいんだよ。全部きっちりは苦しくなるからね。
原価に入れ忘れやすいもの
材料費のほかにも、1個ごとにかかるお金があります。
うちは送料を商品の値段とは別にいただいているので、原価率の3割に送料は入れていません。
送料込みで売るときや、いただく送料より実際の送料が高いときは、その分ももと手に足してください。
販売手数料・決済手数料・振込手数料と、マルシェの出店料・交通費は、もと手とは別に引きます。
計算表では、販売手数料を手数料の欄に入れます。
うちの焼き菓子の詰め合わせでは、箱代だけで値段の約2〜5%でした。
袋と乾燥剤も、1つ約12〜13円かかります。
箱や袋をどこで買って、1枚いくらだったかは、クッキーの箱の記事にまとめています。
1つずつは小さくても、まとめると原価率が数%変わります。
帳簿で見た、材料だけの原価率
では、うちは本当に3割なのか。
確定申告の帳簿で、材料の仕入れが商品の売上の何%かを出してみました。
| 期間 | 材料の仕入れの割合 |
|---|---|
| 2025年(1年間) | 18.8% |
| 2026年1〜6月 | 21.9% |
包装が入っていない数字とはいえ、目安の3割よりだいぶ低いです。
でも、これは「もうかっている」という意味ではありません。
この数字には、作っている妻と、売っているわたしの手間が1円も入っていないからです。
材料費だけで値段を決めると、原価率が低く見えて「十分もうかっている」と勘違いしやすくなります。
原価率がいくら低くても、手間の分は原価率には出てきません。
だから手間は、3つ目の軸の「自分の時給」で別に乗せます。
▼【軸2】相場は「売れている店」をもとにする
次が相場、つまり「まわりはいくらで売っているか」です。
ライバルの値段を見るのは、その値段がすでに「市場の答え」だからです。
人気のお店がその値段になっているのは、それより高くても安くても、うまくいかなかったからです。
人気商品の値段は、誰かが先に試してたどり着いた答えです。
ゼロから自己流で決めるより、まず売れているお店の値段をもとにするほうが、失敗が少なくなります。
ただし、人気店が売れているのは、値段だけが理由とは限りません。
ブランド力・立地・歴史・常連さんといった、値段以外の強みで売れていることも多いです。
人気店の値段は「絶対の正解」ではなく、ひとつの目安として見てください。
うちは、近所のお店とネットの同じジャンルのお店を調べて、まずは真ん中〜やや上に値段を置きます。
味・見た目・体験で中身が用意できてきたら、リピートや評判を見ながら一段ずつ上げます。
調べた中の「一番上」に合わせるのは到達点で、スタート地点ではありません。
中身が先、値段はあとです。
minne・Creemaで相場を調べる手順
レビューやお気に入りが多い人は、市場の答えを持っている人です。
初心者のうちは、オリジナルの値段戦略より、売れている人のまねから始めるのが近道です。

見た目って値段に関係あるの?
あるよ。商品写真や値札をCanvaなどでデザインを整えると、その値段に納得してもらいやすいんだ
▼【軸3】自分の時給を乗せる(うちは5,000円)
3つ目の軸が、いちばん忘れられがちです。
それが、自分の作業時間、つまり自分の時給です。
材料費は計算するのに、作っている時間をタダにしてしまう人が本当に多いです(昔のうちもそうでした)。
材料費と同じ値段で売ると、自分の手間賃はまるごとゼロです。
それでは、続けることも、お店を大きくすることもできません。
だから、うちは目標の時給を5,000円と決めて、その分を値段に乗せるようにしています。
自分の時給なんて入れてる人いるの?
うちは5,000円。正直まだ届いてないけど(笑)、意識するだけで値段が変わるよ。
届かなくてもいいんです。
自分の時間にも値段がある、と意識するだけで、つけられる値段が変わります。
タダ働きを前提にした値段は、いつか必ず自分を追い込みます。
💡ハンドメイド作家さんへ:作業は、作っている時間だけではありません。
梱包する時間や発送の準備も作業なので、時給に入れて考えてください。
- ① 売値 − もと手 − 販売手数料 = 残り
- ② 残り ÷ 1個にかかる作業時間(時間)= いまの実質時給
売値600円・もと手180円・手数料60円なら、残りは360円です。
1個15分(0.25時間)なら、360÷0.25=時給1,440円になります。
上の計算表の最初の数字と同じ、計算の例です(実際に稼いだ額ではありません)。
目標の時給に届かなければ、もと手を下げる・作業を短くする・値段を上げる、のどれかのサインです。
上の計算表を使えば、この計算もその場でできます。
▼【例】3つの軸の重ね方をひとつ通してみる
言葉だけだとイメージしにくいので、ひとつ例で通してみます。
手作りの商品を売るとします。
この3つが重なったところが、「これでいい」と言える値段です。
うちの棒付きマカロンも、この考え方で、通常の味は店頭の1本600円にしています。
でも正直に言うと、3つの軸はいつもきれいに重なるわけではありません。
1種類を仕込むのに、生地を作って・乾かして・焼いて・サンドして・仕上げて・袋詰めで、丸1日(約8時間)かかります。
できるのは、大きいサイズ10本と小さいサイズ12本、合わせて22本ほどです。
8時間分の時給(5,000円×8=40,000円)を22本で割ると、1本あたり約1,800円の手間がかかっている計算です。
でも売値は600円です。
時給を丸ごと乗せたら、誰も買えない値段になってしまいます。
だから現実は、優先順位をつけます。
時給5,000円は、いつか届きたい目標です。
そこに近づくために、入口は薄く・こだわりは厚くして、お店全体の利益を底上げしています。
▼値上げの実例|それでも毎回こわい。でも上げてきました
3つの軸で値段を決めても、値上げはやっぱり毎回こわいです。
でも、ここ数年は材料費がどんどん上がっています。
バター、アーモンド、砂糖……作り手なら、痛いほどわかりますよね。

うちの値上げの実例です。
前もってお知らせしたのは、マカロンポーのときだけです。
ほかの商品は、お知らせせずに値段を変えました。
いちばん気になる「値上げのあと、どうなったか?」も正直に書きます。
一部のお客さんは離れました。
でも、多くのお客さんが変わらず支えてくれました。
安いまま続けてお店が立ち行かなくなるほうが、お客さんにとってもずっと悲しいことです。
値上げしたら、ネットに古い値段が残っていないか確かめる
値上げで、うちが見落としていたことがあります。
2026年8月、Googleの検索結果の商品の欄に、2,280円という値上げ前の値段が出ているのを見つけました。
4本セットを2,480円にしてから、2年以上たっていました。
お店の管理画面には、どこにも古い値段は残っていませんでした。
Google側に、昔の商品の情報が残っていたようです。
お客さんが2,280円のつもりでお店のページを開くと、2,480円を見てがっかりしてしまいます。
ネットで売っている人は、値上げのあとに、自分の商品名で一度検索してみてください。
▼いちばんダメなのは「お店が続かなくなること」
値段で迷ったとき、うちがいつも立ち返る言葉があります。
それは、「いちばんダメなのは、お店が続かなくなること」です。
安くして喜んでもらえても、利益が残らずにお店をたためば、もう二度とその商品を届けられません。
値上げは、応援してくれるお客さんのためでもあると思っています。
お店が続けば、新しい商品を作れますし、味も品質も守れます。
無理な安売りをせずに、笑顔でお店に立てます。
だから値上げは、わがままではありません。
これからも作り続けるための、まじめな選択です。
値付けに、ずっと続く正解はありません。
材料費やお客さんの変化で、正解は変わっていきます。
だから、定期的に見直していいんです。
値上げはやっぱり気がひけるよね…
気持ちはわかる。でも、続けられること自体がいちばんのお客さん孝行だと思ってるよ。
▼今日からできる、値段の見直し手順
やることは3つです。
時給5,000円は、うちの目標です。
最初は1,500〜2,000円でも、時給が乗っている状態を作れれば十分です。
これだけで、なんとなく決めていた値段が、「これでいい」と言える値段に変わります。
ネットで売る場所の選び方は、BASEとSTORESの比較記事にまとめています。
値段が決まったら、払い方(現金・カード・QR)も決めておくと、お客さんが買いやすくなります。うちの選び方は、お菓子屋を開いたら、カード決済とレジはどうする?4年の実例にまとめています。
▼よくある質問(ハンドメイドの値段の付け方)
Q1. ハンドメイド作品の原価率はどれくらいが目安ですか?
A. 決まりはありません。
うちは「お店の商品ぜんぶをならして原価率3割」を目安にしています。
帳簿で材料の仕入れだけを見ると、2025年は売上の18.8%でした(包装は入っていません)。
材料費の割合は作るものによって大きく違うので、1個ずつではなく、お店全体でならして考えるのがおすすめです。
Q2. 材料費のほかに、何を原価に入れればいいですか?
A. 包装・ラッピングも入れます。
送料込みで売るなら、1個あたりの送料も入れます。
販売手数料は原価に入れず、計算表の手数料の欄で別に引きます。
とくに自分の作業時間を入れ忘れる人が多いので、時給として別に乗せて考えると、安すぎる値段を防げます。
Q3. 最初は安く始めて、あとから値上げしてもいいですか?
A. はい、大丈夫です。
相場の真ん中〜やや上から始めて、リピートや評判がついてきたら一段ずつ上げていきます。
うちも開業してから何度か値上げしてきました。
Q4. 値段を上げると、お客さんは離れませんか?
A. 正直、一部の方は離れます。
でも、値段に見合う中身を用意していれば、多くのお客さんは変わらず支えてくれます。
うちは、安すぎてお店が続かなくなるほうが、ずっと大きなリスクだと考えています。
Q5. 自分の作業時間は、どう値段に反映すればいいですか?
A. 「自分の時給」を決めて、その分を乗せます。
うちの目標は時給5,000円で、まだ届いていません。
届かなくても、自分の時間にもお金がかかっていると意識するだけで、つけられる値段が変わります。
Q6. 値段が決まったら、どこで売るのがいいですか?
A. ネット販売なら、まずは月額0円で始められるサービスから試すのがおすすめです。
わたしはShopify公式サイトを使っていますが、月額がかかるので、初めてならSTORES
やBASE
から始めると負担が少なく済みます。
選び方は「BASE・STORES比較」の記事にまとめています。
Q7. 「原価の3倍」で値段をつけるのは正しいですか?
A. 原価率3割は原価の約3.3倍なので、うちの目安とほぼ同じ考え方です。
ただ、作るのに時間がかかる作品は、3倍でも時給が残らないことがあります。
計算表で、実質の時給も一緒に確かめてください。
Q8. ハンドメイドの原価計算に使えるアプリはありますか?
A. この記事の計算表は、材料費・手数料・作業時間を入れると、その場で値段と時給を出せます。
登録もインストールも要りません。
作品が増えてきたら、表計算ソフトに同じ項目を並べて管理すると、値上げのときに見直しやすくなります。
▼まとめ|値段が怖いあなたへ、3つの軸とひとつの勇気
最後に、この記事の要点をまとめます。

- 値段は「原価・相場・自分の時給」の3つで決める
- 原価は1個ずつではなく、お店全体でならして3割
- うちの材料の仕入れは売上の約2割(包装も手間も入っていない)
- 相場は、自分と同じくらいの規模で売れているお店をもとにする
- 時給は届く範囲で乗せる(うちの目標は5,000円)
- 売る場所の手数料まで入れて、手元に残る額を出す
- 値上げのあとは、ネットに古い値段が残っていないか確かめる
値段をつけるのが怖いのは、あなたの商品に価値がないからではありません。
決める基準を、まだ持っていないだけです。
あなたの手間と時間は、ちゃんとお金に換えていいんです。
計算表に入れたら、わたしの時給も出せそう!
まずは今の値段で、実質の時給がいくらか見てみてくださいね。
値段の見直しも、開業の流れの中では8番目のSTEP「続ける」で扱ったことのひとつです。→ お菓子屋を開くまでの流れ|許可からレジ・商標まで全部まとめ
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